はじめに — なぜ研究計画書と倫理審査が重要なのか?
研究を進めたいと思っても、「まず何を準備すればよいの?」と悩む方は多いです。
研究の最初の関門が 研究計画書の作成 と 倫理審査委員会(IRB)への申請 です。
これをクリアしないと、データ収集も解析も始められません。
また、倫理審査を通っていない研究は、学会発表や論文投稿ができないケースもあります。
つまり、計画書と倫理審査は研究の土台といえるのです。
研究計画書に必ず含めるべき項目
研究計画書は「研究の設計図」です。
審査委員会や共著者に研究の意義と方法を理解してもらうため、以下の項目は必須です。
それぞれの内容に、実際にどのように書けばよいかの例も示します。
① 研究目的と背景
研究を始める動機や社会的・臨床的な意義を明確にします。先行研究の不足点や課題を示すことで、なぜこの研究が必要なのかが伝わります。
「高齢者の転倒予防に関する研究は数多く存在するが、在宅復帰後の転倒に関する前向き研究は少ない。」
② 研究デザインと対象
観察研究なのか介入研究なのかを明確にし、対象者の選定基準を具体的に書きます。除外基準がある場合も忘れずに。
「65歳以上の脳卒中患者を対象にした後方視的観察研究とする。発症後1か月以内に退院した患者は除外する。」
③ 研究方法
データの収集方法や使用する測定項目を明記します。測定ツールやアンケートの妥当性についても触れると説得力が増します。
「診療録から年齢・性別・既往歴を抽出。歩行速度は10m歩行テストで評価し、退院1か月後の転倒有無を電話調査で確認する。」
④ 統計解析計画
どのようにデータを解析するのか、主要な統計手法を具体的に記載します。必要に応じてサンプルサイズの根拠も示します。
「退院後の転倒有無をアウトカムとし、ロジスティック回帰分析で歩行速度との関連を検討する。サンプルサイズは有意水準5%、検出力80%を前提に算出した。」
⑤ 倫理的配慮
個人情報をどのように守るか、同意取得の方法はどうするかを明確にします。匿名化・対応表管理の手順は審査で特に重要です。
「患者IDと氏名の対応表は研究責任者のみが管理し、研究データは匿名化してパスワード付きPCに保存する。」
⑥ スケジュールと体制
研究が現実的に進行できることを示すため、タイムラインと研究メンバーの役割を整理します。
「2025年4月〜6月にデータ収集、7月〜8月に解析、9月に学会発表を予定。責任者は○○、データ収集は△△が担当する。」
倫理審査の申請フロー
研究計画書ができたら、次は倫理審査委員会(IRB)に申請します。
多くの病院や大学では以下の流れになります。
- 申請書類の準備
– 研究計画書
– 同意文書(インフォームドコンセント説明文)
– 研究責任者・分担者の履歴書
– 研究資金や利益相反(COI)の申告書 - 審査書類の提出
– 定められた期日までに事務局へ提出 - 委員会での審査
– 書類審査+必要に応じて研究責任者が出席して説明 - 修正依頼への対応
– 曖昧な点や不十分な記載は差し戻される
– 修正後、再審査を経て承認 - 承認通知の受領
– これで初めて研究を開始できる
よくある指摘と対策
倫理審査では、以下のような指摘がよくあります。
– 研究目的が曖昧 → 具体的な仮説や先行研究を補足する
– サンプルサイズの根拠不足 → 統計的検出力(パワー解析)の説明を加える
– 個人情報管理が不十分 → 対応表や匿名化の手順を明示する
– インフォームドコンセントが形式的 → 説明文を分かりやすく、対象者に配慮した内容にする
ポイントは、「第三者が読んで理解できるか」 という視点です。
Q&A
Q. 倫理審査に通るのはどれくらい時間がかかりますか?
→ 施設によりますが、1〜3か月程度が目安です。
Q. 小規模データでも審査は必要ですか?
→ はい。症例数に関係なく、人を対象にした研究は原則必要です。
Q. すでに取得済みのデータを使う場合は?
→ 後方視的研究でも原則審査が必要です。ただし匿名化されている場合など、簡易審査で済むこともあります。
📚 参考文献
- 文部科学省・厚生労働省・経済産業省:
「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」[リンク] - 厚生労働省:
「臨床研究法」概要ページ [リンク] - 飯嶋久志ら,超簡単!!研究倫理審査と申請 第2版 ~適正な臨床・疫学研究に向けて~.薬事日報社 [リンク]
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まとめ
- 研究計画書は「研究の設計図」
- 倫理審査は「研究のスタートライン」
- よくある指摘は「目的の曖昧さ」「個人情報管理の不備」
まずは頭の中を整理するために、計画書のフレームワークに沿って、あなたが考えている研究についてまとめてみましょう!