「相関は出たけど、本当に因果関係を示しているのか不安」
「交絡因子ってよく聞くけど、どう扱えばいいのか分からない」
研究初心者が最もつまずきやすいのが、この交絡因子と多変量解析です。
疫学では、単純な比較だけでは正しい結論にたどり着けないケースが多くあります。
この記事では、疫学の視点から多変量解析と交絡の基本を整理し、研究の信頼性を高めるための考え方を解説します。
交絡とは何か?
① 交絡の定義
交絡(confounding)とは、研究対象の「曝露」と「アウトカム」の両方に関連する第三の要因によって、本来の関連が歪められることです。
例:
– 喫煙と肺がんの研究 → 年齢が交絡因子
– 運動習慣と心疾患の研究 → 食生活が交絡因子
もし交絡を考慮しないと、本当は存在しない関連を見てしまうリスクがあります。
② 交絡の条件
交絡因子とされるためには、以下の条件を満たす必要があります。
– 曝露と交絡因子が関連している
– 交絡因子とアウトカムが関連している
– 交絡因子が曝露とアウトカムの間の因果経路には含まれない
この理解があると、研究デザインの段階で「どの変数を調整すべきか」が見えてきます。
多変量解析の基本的な考え方
① 回帰モデルによる調整
交絡因子を統計的に調整する代表的な方法が回帰分析です。
– 線形回帰 → 連続アウトカム
– ロジスティック回帰 → 二値アウトカム
– Cox回帰 → 時間依存アウトカム
例:年齢・性別を共変量に加えて、運動習慣と心疾患の関連を評価する。
② ストラティフィケーション
解析を交絡因子の層ごとに分けて比較する方法です。
例:年齢層別に運動と心疾患の関連を見る。
シンプルですが、サンプル数が減るという欠点があります。
③ マッチング
ケースとコントロールを交絡因子で一致させる手法です。疫学研究(特にケースコントロール研究)で多用されます。
例:年齢・性別が一致する対照群を設定する。
交絡と因果推論の視点
疫学研究では「交絡をどう扱うか」が因果推論の質を左右します。
単なる統計的有意差ではなく、
– バイアスの有無
– 交絡の影響
– 残余交絡の可能性
を考慮して解釈する必要があります。
DAG(有向非巡回グラフ)を使うと、交絡関係を図示でき、因果構造を直感的に理解できます。
データ解析での実際的な注意点
① 必要以上の調整は避ける
すべての変数を投入すれば良いわけではありません。
因果経路上の変数を調整すると、逆にバイアスが生じることがあります。
② サンプルサイズと過剰適合
説明変数が多すぎると過剰適合(overfitting)が起き、結果の一般化が難しくなります。
サンプルサイズに対して適切な変数数を設定しましょう。
③ 解釈は統計だけでなく疫学の視点で
「オッズ比が有意だから因果関係がある」と短絡的に結論づけてはいけません。
疫学の知見と現場の臨床的妥当性を組み合わせて考えることが大切です。
Q&A
Q. 交絡と効果修飾はどう違うの?
→ 交絡は「真の関連を歪める要因」。効果修飾は「ある要因の効果が別の変数によって変化する現象」。
例:喫煙と肺がんの関連は、性別によって強さが変わる(効果修飾)。
Q. 多変量解析をすれば交絡は完全に除去できる?
→ いいえ。モデルに含めていない因子は残余交絡として残ります。
設計段階から「重要な因子を見落とさない」ことが重要です。
Q. 調整する変数は多ければ多いほど良いの?
→ 逆にバイアスを生むことがあります。因果経路にある変数を入れると過剰調整となり、解釈を誤る可能性があります。
Q. サンプル数が少ないときはどうする?
→ 変数を絞る、ストラティフィケーションを使う、あるいは小規模データに適した統計手法を選ぶなどの工夫が必要です。
まとめ
– 交絡は研究結果を歪める大きな要因
– 多変量解析(回帰分析)が代表的な調整手法
– ストラティフィケーションやマッチングも重要な選択肢
– 疫学の視点で「因果推論」を意識して解釈することが研究の質を高める
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参考文献
– 中村好一:基礎から学ぶ楽しい疫学第4版.医学書院.[リンク]
– Hernán MA, Robins JM. Causal Inference: What If. [リンク]
– 日本疫学会(監修):はじめて学ぶやさしい疫学(改訂第4版): 日本疫学会標準テキスト.南江堂.[リンク]
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